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アムトラックの旅(その1)

040620_063501.jpgニューヨークはペンシルベニア駅。そう、あの「マジソン・スクエア・ガーデン」の地下にある駅、ここがアムトラックの駅になる。ニューヨークのど真ん中、周りに線路の姿は全くないので、まさかここが駅だとはなかなか想像できない。
今回の旅はアメリカ大陸横断。ニューヨークからサンフランシスコ(正確にはヨセミテ公園近くのリノまで)までを列車で横断するのである。
そしてこれから乗るのが、このレイクショア・リミテッド号。これでまずニューヨークからシカゴまで約1,500km、1泊2日の旅に出る。
我々が乗ったのは「スリーパー」と呼ばれる寝台車。この列車には他に一般客車とダイニングカー、ラウンジカーを備えており、スリーパーもデラックスとスタンダードに分かれる。
中でもスリーパーの乗客には、出発前には専用のラウンジが用意され、ドリンク&軽食サービスがあるので、なんだか飛行機のビジネスクラス並の待遇になる。ちょっと気分が良い。
このレイクショア・リミテッド号は、「ビューライナー」というシリーズの中でも新しいタイプの列車を装備している、いわば最新鋭の列車らしい。

列車はほぼ定刻通りに出発らしい。ラウンジのアナウンスがあり、我々はホームに案内された。
そして乗り込んだスリーパー(スタンダード)がこれである。
040620_044402.jpg各寝台(キャビン)は2人用個室になっており、画像には映っていないが、窓を挟んで両側に1人掛けのシートがある(シートは片側だけ映っている)。夜はこの部分が下段のベッド、そして上にもベッドが設けられる。
ところで、このシートの隣に付いている設備。上部は鏡で、その下がライティングデスクの様な洗面台である。そしてその下は…椅子ではなくて、実はトイレ
各キャビンにトイレが付いているのは良いものの、仕切りがまるで無い。
いくら夫婦といえども、目の前で用は足せないと思うのだけど…
アメリカらしい合理的設備といおうか、それにしても「習慣の違い」だけではどうしても片付けられない。
お客様へは共同トイレを探して、一般客車をご案内しておいた。

摩天楼の地下から抜け出た後は、しばらくハドソン川と共に北上していく。もうそこには高層ビルは見当たらない。緑豊かな平野と住宅、そしてゆるやかに流れる大河が景色に変化を与えてくれる。

列車は夕刻、オーバニー駅で約40分停車した。
ボストンからやってきた同じレイクショア・リミテッド号を接続するためだ。
しばらく列車の外に出て、新鮮な空気をめいっぱい吸い込む。太陽の光をじかに浴び、なんともいえず心地良い。

夕食は夜の7時頃に予約した。スリーパーの乗客は、ダイニングカーの食事は食べ放題(料金に既に含まれている)なのだ。メインディッシュはTボーンステーキやサーモン、チキンなど6種類の中からのチョイス。デザートやコーヒーまで含まれている。お客様は「BSEがなんとか…」と言いながらもこぞってTボーンステーキをチョイスしていた。
夏至を迎えたこの季節、日没は8時半頃。丁度デザートにコーヒーを味わう頃に、雄大なアメリカの大地に沈む夕陽を皆で眺めることができたのは感動だった。

「レイクショア~」というだけあり、この列車は五大湖の内オンタリオ湖・エリー湖・ミシガン湖に沿って走っていく。
しかし大半を夜中に通過するため、湖岸の美しい景色を期待していた私は少々がっかりだった。まさかナイアガラの滝は見えないとは思っていたけど、バッファローは11時半頃の到着。滝の雰囲気とは程遠い景色しか見えなかった。エリー湖岸の鉄の街クリーブランドは夜中の3時に通過。

スタンダードキャビンには、シャワーは付いていないが、各車両に共用のシャワールームがある。しかしいつしかうとうとと眠ってしまい、とうとう使いそびれてしまった。お客様も誰も使っていなかったようだ。

のどかなとうもろこし畑に朝日があたり始めた頃、目が覚めた。
この辺りは一面の畑、そして点在する住宅。いずれも玄関の横にベンチがこっちを向いて付いている。昼間はここから列車が走るのをじっと眺めているのだろうか?そんな老人の姿を想像してしまった。
ゆるやかなカーブを描いた丘は広がるものの、その奥に普通見えるはずの山が全然ないのが、なんだかとても不思議。
自分が初めて上京した時に、山が全く見えない関東平野に驚きと物足りなさを感じた、あの瞬間を思い出していた。

朝食を取っていた頃、ようやく湖の景色が見えてきた。ミシガン湖である。
九州と四国がすっぽり入ってしまうほどの大きさだと言われるミシガン湖だけに、対岸が全く見えず、湖というよりはもう海である。
ミシガン湖を見ている内に、次第に建物の姿が増え、シカゴが近い事を感じさせてくれた。

シカゴより時間が変わる。東部時間帯から中部時間帯に、時計を1時間遅らせなくてはいけない。時差の瞬間。実はいったいいつ、どこからがその始まりなのか?列車内では一切案内が無い。なんとなく遅らせておいた方がいいかな…と思っている内に列車も速度を緩め始めた。断続的に停車もする。
まあ、どうせ終点まで乗るのだから、乗り過ごす事はない。その内近づいたら案内があるだろう…、と思っていながらも、お客様の手前そういう訳にはいかない。スタッフに「あと何分?」「何時に着くの?」と何度尋ねたことか…?
スタッフの答えも曖昧なのである。

おかしいな、時計は1時間遅らせたものの、その時間でさえ到着予定の8時55分を過ぎている。
列車は結局9時半を過ぎた頃に突然バックを始め、その直後スタッフが「間もなくシカゴに到着します」と各キャビンに声をかけ始めた。
そしてシカゴに到着したのが9時55分。結局1時間遅れで到着した。

アムトラックの大陸横断鉄道は、現地に住む人たちでさえなかなか乗る機会が無いという。
アメリカでは鉄道よりも空路を利用するのが一般的であり、空路の方が早くて安い。せいぜい3~4時間の距離なら列車を利用する事があっても、数時間遅れるのが日常茶飯事のアムトラックは、もはや人々の足とはなりえないのだ。このため、特に寝台列車利用の旅は、よほどお金と時間に余裕のある人しか利用されず、それが逆に「最高の贅沢」とも称されている所以らしい。
オリエント急行のような華やかさ、贅沢さは全くもって無いのだけど…。

1泊しただけだが、私自身は結構気に入った。なによりも雄大な大地の景色を眺めながらのトイレは、なかなか得難い贅沢である。

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