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ホワイトクリスマス

それは2000年のクリスマス・イブのこと、当時名古屋にいた私は、イブの日出発の「イタリア8日間」の仕事に出発した。当時名古屋空港に就航していたKLMオランダ航空は、札幌を経由してアムステルダムに行く。名古屋発のヨーロッパツアーは、このKLMを利用する事が多くて、この時だけでマイレージが40万マイル以上になったほどだった。殆どご無沙汰になっていた北海道には、毎回1時間程度お邪魔していた。搭乗待合室で約40分間過ごすのだが、その度に北海道の味やラベンダーキティを物色するのが唯一の楽しみでもあった。

さて、その日もKLMで札幌に着陸し、約1時間後に離陸…するはずだった。

しかし、ブリッジをはずして滑走路に向かう途中で、突然の吹雪に見舞われ、旅客機が立ち往生してしまったのだ。
機内アナウンスでは
「只今激しい降雪のため、滑走路が閉鎖されております。除雪作業も間に合わない状態ですので、小降りになり除雪が完了するまで、機内でしばらくお待ち下さい。」
を繰り返すばかり。

我々は朝10:30に名古屋空港を出発して1時間半後千歳空港に着くまでの間、小さなサンドイッチ一かけしか食べていない。昼食は札幌を離陸してから出される予定なのだ。もう午後の3時を過ぎているのに、食事はどうなるのだ?とクルーに尋ねても、
「食事は離陸してから出ないと用意できません。」
立ち往生という状態では、ゲートに引き返すこともできず、乗客は皆、軽食を取ることさえできない。こんなことなら、待合室でいくら丼を買っておけば良かった…。

いやそれよりも、我々はアムステルダムが最終目的地ではない。乗り継いで今日中にミラノに行かなくちゃいけないのだ。次のフライトまでの乗継時間は約2時間。もうとっくに2時間以上待たされている。
「どうしてくれるのよ??」
とクルーに詰め寄ったところで、クルー自身もどうしようもないのはわかっている。真っ青になって怒鳴っている乗客はいるけれども、天候事由では航空会社に全く責任の及ばないところ。
とりあえず会社に現況を報告して、現地の対応を依頼するのが精一杯である。
「お客様を、どこかにご案内するとか、とにかくなんとかしろ。」
「そう言われても、我々は機内から一歩も外に出る事ができません。」
「待合室に戻れないのか?」
「無理です。旅客機はエプロンで立ち往生しているのです。」
「・・・・・」
会社もあてにならない…。

結局雪が収まって滑走路の除雪が終了し、旅客機に付いた雪を落として離陸するまで、9時間!機内待機を余儀なくされたのだった。座席に座ったまま9時間…である。

札幌を離陸後は、ほぼ順調に、さらに約9時間かけてアムステルダムに到着した。結局我々は名古屋から1.5時間、さらに待機で9時間+離陸して9時間、合計約20時間も機内で「生活」したことになる。昼食も、用意されたのは既に日本時間の午後10時をまわっていた。
8時間の時差があるので、アムステルダムはまだ、かろうじてクリスマスイブのままだったのが幸いかな。
到着後、まずお客様にしばらくお待ち頂いて、乗継便の確保に奔走した。当然当日のミラノ行はもう終了していたが、幸い翌朝のミラノ・リナーテ空港行きが確保できた。リナーテ空港は、当初予定のマルペンサ空港よりも中心部に近いので、うまくいけば、そのまま予定通りミラノの市内観光ができそうだ。

KLMの案内で、乗継客達は皆、空港周辺のホテルに宿泊できる事となった。
「ラマダ」とか「シェラトン」とかゴージャスな名前が付いているものの、空港周辺のホテルは皆ビジネスホテルである。
オランダもすっかり雪景色だった。ホテルのロビーに飾られたクリスマスツリーが、ようやく我々に暖かさをもたらしてくれた。

クリスマスの朝、ロビーでチェックアウトを済まし、迎えのバスを待っていた時、一人の男の子がフロントでトラブッていた。
なぜか私がスタッフに呼ばれ「言葉が通じないからなんとかしてくれ」と言われて訳を訊くと、
「PAY TVの代金を払え」との事。
男の子は、ロンドンに向かう途中で、ヒースロー空港に到着すれば叔母さんが迎えに来るから、と何と1銭もお金を持っていなかったのだ。なら、エッチビデオなんか見るなよ!
と言いたい気持ちをぐっとこらえ(笑)、仕方なく千円貸してあげたのだが、名刺を渡しておいたものの、その後何の連絡もよこさないのは「仕方ない」と思うしかないだろうか…。

やっとアムステルダムを出発し、午前10時半にはリナーテに到着した。現地スタッフに連絡しておいた通り、バスが空港に迎えに来てくれていた。ドライバーもやっと到着した我々に「やっと会えた!」という気持ちを最大限に表してくれ、両手を広げて歓迎してくれた。

バスは早速ミラノの市内観光に入ったが、予定の場所で待っていたガイドさんは、その事実を全く知らされておらず、なんと2時間半もここで待機していたのだそうだ…。
ミラノの街も珍しく銀世界。我々はここで初めて、生の雪を踏みしめる事となった。
2000年を控えて大修復を行った大聖堂はすっかり白くなり、白い雪の間から覗く尖塔の数々がとても眩しかったのを覚えている。
25日はクリスマス。今日がこちらでは本番。本当に人影の無い、ドゥオモ広場であった。

我々はミラノの市内観光を、なんと30分で済ませ、早々に昼食を終えてヴェローナ~ベネチアと向かい、ようやく当初の予定に軌道を戻す事ができたのである。

追)帰りはしっかり、千歳空港でいくら丼を買って帰ったのはいうまでもありません(笑)

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コメント

ひえ
毎度のことながら、ほんとうにトラベルとはトラブルと同意語であることを思い知らされます。
得てしてわれわれは、添乗員さんが旅行会社そのものと思ってしまいがちですが、ひたすら文句を言うだけでいい客と違い、自分の責任でもないトラブルに矢面に立って対応しなければならない添乗員さん。
ほんとうにタイヘンな仕事なんですよね。

それにしても「マイレージが40万マイル以上」って。(゚_゚)
すご。
きっと、地上にいるより空の上にいる時間のほうが長いんだろな。
まさにまりあさんは天使だ。

(すみません、言い過ぎました。m(_._)m )

投稿: ピーちゃんの身元引受人 | 2004.12.25 07:17

ピーさん、どうも(^_-)-☆

そう、天使のまりあと一緒に海外旅行すると、40万マイルでファーストクラスが漏れなく付いてきます!


といっても、誰も来てくれやしない…(ぶつぶつ)

投稿: まりあ | 2004.12.25 15:45

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