HOTEL BAUER
ベネチアで宿泊したホテルは、サンマルコ広場に程近い、5つ星のホテル。最初はモーターボートに乗ってホテルの入口まで入っていく。そう、ホテルの入口が運河。
島のホテルは高級な割には設備も古く部屋も狭い所が多い。
小さな人工の島をいくつも合わせた所だから、それでなくとも電気も水も貴重品な上に地盤沈下と戦わなくてはいけない。そんな厳しい条件の中でやっているのだから、どうしてもアメリカ資本の巨大ホテルのような、オールマイティなサービスというのは望めない。
と頭ではわかっていても、どうしても5つ星だから期待してしまう。そこで、いろいろなクレームが湧いてくる。
「イタリアのホテルで文句を言い始めたら100万件言えるぞ!」
と、胸張って豪語できる私なのだが…
このHOTEL BAUER、部屋も設備もやはり「うーんイマイチ」という感じではあったが(もちろん添乗員がゴージャスな部屋に泊まれるわけがない)、今回敢えて取り上げたのは、画像にあるレストランについて。
お客様と一緒に朝の散歩を終えてホテルに戻り、そのまま朝食のレストランに赴いた私たちを迎えていたのは、青い海とその向こうに広がるサンタマリア・デ・ラ・サルーテ教会の白い建物。オープンテラスだった。
「ルームナンバー」を告げる事も無く、「5名」とだけ言うと、景色の良く見える明るいテーブルを用意してくれた。
「外から入ってきて、部屋番号も言わずに朝食食べられるなんて、チェック甘いなぁ~」
そう、これなら誰でも朝食食べられるのである! ここに泊まってなくても。
「コーヒー?紅茶?」
と若いボーイさんに訊かれたので、コーヒー4つと紅茶1つを頼んで、後はバイキング。自然の風と青い海に囲まれて食べる朝食なんて、本当に心地よい。まるでハワイのようだった。
翌朝は帰国の日。
身支度を整えて、また「5名」とだけ告げてレストランに入っていった。
そこには昨日のボーイさんが同じように席を用意してくれた。
「コーヒー4つに紅茶1つ?紅茶はレモン?」
ボーイさんは、私達の事を、しかも飲物の種類までちゃんと覚えていてくれたのだった。
残念ながら、一人紅茶に寝返った人がいて、ボーイさんは「オーッ」と残念そうな顔をしていた。
私が荷物を見ている間にお客様は料理を取りに行き、そしてその間にボーイさんは飲物を持ってきてくれた。
驚いたことに、私達がほんの一瞬座った席までちゃんと覚えていて、コーヒーと紅茶を的確に置いていく。
「日本のホテル・オークラのドアマンさんが、一度覚えたお客様の顔と名前を、そして趣味嗜好を決して忘れない。」
という話は有名で、そんなさりげない心遣いが美談として日本には残っているが、イタリアのこのホテルでは、こんな若いお兄ちゃんがそれをしっかり実践しているのには、正直相当驚いた。
さらに…
食事をしていたら、突然
「まりあさんですか? こちらにお電話が入っております。」
と電話機を渡された。
ベネチアの島と半島を繋ぐ唯一のリベルタ橋が、事故で通行止めになり、空港までのケアをしてくれるアシスタントが行けなくなった、という緊急連絡だった。
緊急連絡を受けることができたのはありがたいが、それにしても、どうして私がここで、このテーブルで朝食を食べていることがわかったのだろう??
日本人客は他にも10名以上はいた。
部屋番号も名前もサインも一切レストランには残していないのだ。
この理由は未だもって謎である。
謎であるけれども、これがイタリアの5つ星ホテル流サービスなのだ!というのを実感した。
イタリアのホテルは4つ星が異常に多い。
これは2000年を迎える際に無理やりランクアップしたホテルが急増したためで、限りなく3つ星に近い4つ星ホテルが5万とある。だから4つ星と書いてあっても殆ど信用できないホテルが多いのが実情。
毎回毎回、お客様には「イタリアですから」と言い訳しながら我慢してもらうのが常だった。
そんな負の面ばかりを見てきた私だから、5つ星のこのホテルのホスピタリティーの素晴らしさとさりげなさに、素直に敬服し感動を覚えたのである。JALのCS担当者にも、ぜひ学んでほしい。
見直したゾ、イタリア!(笑)
(追伸)泊まらなくても朝食食べられる…なんてことは決してありません。
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コメント
おはようございます
なんだ、本気にしちゃったよ^_^;
いえ、ベネチアに行く予定は無いですけどね。
投稿: poohpapa | 2005.05.10 06:29
まあ、私と一緒なら顔パスで食べられるかも~(うそ)
小泉さんと入れ違いに、これからロシアに行って来ます。
投稿: まりあ | 2005.05.10 10:55
ウフィツィ 美術館にも寄りました?ボッティチェッリの春やビーナスの誕生があるんですよねえ。
でこんどはロシア?シベリア横断鉄道でウラジオストクまでとか?同級生にロシアと貿易やっているやつがいて、ストッキングたくさん持っていけばバッチリだと呪文のようなセリフをはなっていたのを思い出しました。
投稿: 惑 | 2005.05.13 23:48
惑さん
コメントが遅くなってごめんなさいm(__)m。
ウフィッツィ美術館は、フィレンツェに行くと95%の確立で見学コースに入っております(笑)。
今回も漏れなく!
しかし、レオナルド・ダビンチやミケランジェロ、ラファエロといったルネサンスの三大芸術家の影に隠れた感のあるボッティチェリですが、ここではこの三人をしっかり凌駕しております。
私も初めて見たときは「本物だぁ~~!!」という、なんともいえない感動をしたものでした。(なんのこっちゃ(笑))
しかし、この「本物だぁ~~」という感動が大切なんだ、とお客様には説明しております(^_-)-☆。
投稿: まりあ | 2005.05.21 12:35