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十字架の丘

050516_22490001.jpg今回ロシアより評判の良かったバルト三国。
ペテルブルグのガイドさえ口にする「バルトはヨーロッパだから」という言葉が、国境通過直後でさえ実感できたほどだった。

陸路でロシアを出国するだけで2時間。荷物を総て持って出国審査を受け、一方でバスの隅々まで検査される始末。
ナルヴァ川を渡ってエストニアに入国したときは、わずか20分だったのに。

道路の舗装状態、レストランの食事、ホテルの設備…何もかもがロシアとはまるで違う。
独立して10年あまり、EUに加盟したばかりの国が、これほどまでに変化を遂げていたとは、思いも寄らなかった。

ラトビアから三国目のリトアニアに入国して小一時間走ると、十字架の丘にたどり着く。
何も無い田園地帯の中に、突如として現れる何万もの十字架。

ソ連時代、征服されたリトアニアの国民の多くがシベリアに抑留された。
ソ連は住民を追い出し、そこにロシア人をどんどん投入して、同化を図ったのだろう。

シベリアに流され、二度と帰ってくることのない家族を、恋人を、友人を偲んで、リトアニア人達は密かにここに十字架を手向け、祈りをささげたという。
当時のソ連は宗教禁止の名目で、この十字架の丘までも立ち入り禁止区域にしてしまった。

そんなリトアニア人達の魂が眠る地、両手を大きくかざしたキリストの像を眺めるだけで、たとえようもなく胸が締め付けられたのだった。無信教の私でさえも。

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